刀の基礎知識

刀の作り方

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日本刀とは、伝統的な日本独自の製法で作られた刀のこと。日本刀は、古来より専門の刀鍛冶によって作刀され、長い歴史の中でその技術は進化していきました。現在でも作刀技術は伝えられ、新しい刀も生み出されているのです。刀ができるまでの工程を紹介します。

鋼の作製

日本刀を作るには、質の良い鋼(はがね)が必要不可欠。刀の素材には「玉鋼」(たまはがね)と呼ばれる最上質の鋼を使用し、さらに不純物を取り除いて日本刀の刀身(とうしん)とします。ここでは、刀の質が決まる重要な工程である、鋼の制作過程を観ていきましょう。

「玉鋼」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

たたら製鉄

たたら製鉄」とは、刀の素材となる玉鋼を制作するための工程です。まず、粘土でできた炉に原料となる砂鉄と炭素を融合させるために木炭を入れます。「鞴」(ふいご)を動かして送風し加熱されることで、鉄に含まれる炭素の割合を調節するのです。70時間ほどかけて鞴を動かし、玉鋼は完成します。このとき砂鉄を使用するのは、もともと含まれている不純物が少ないからです。

たたら製鉄は、近代まで一子相伝で伝わってきた製鉄法でしたが、この技術が大正時代に一度断絶されます。第二次世界大戦以前の「靖国たたら」から復活し、再びたたら製鉄が行なわれるようになりました。

現在は島根県仁多郡奥出雲町にある「日刀保たたら」で製鉄が年に数回ほど行なわれ、制作された玉鋼は国によって管理されています。なお、島根県は古来より良質な鋼の産地として知られ、現在でも「安来鋼」は優秀な鋼として刀工達に使用されているのです。

「たたら製鉄 玉鋼誕生物語」YouTube動画

たたら製鉄 玉鋼誕生物語

水へしと小割

刀となる素材である玉鋼は、炭素量によって硬さや柔軟さが変わるため、玉鋼が刀工の手に渡ると、まずは炭素量に応じて分別されます。

これは「水へし」と「小割」(こわり)という作業で、水へしは玉鋼を熱して、厚さ5mm程度に打ち延ばし、水のなかに入れて急激に冷却することです。

小割は、水へしで割れなかった部分を、2~2.5cm四方に槌で叩いて割る作業。炭素の多く含まれている部分は硬いため、炭素量の多い部分は水へしと小割により砕かれ、柔軟な鉄と硬い鉄に分けることができるのです。この2つの作業は「へし作業」と呼ばれ、これにより刀の地鉄(じがね)が作られます。

「日本刀の地鉄とは」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

鍛錬

鍛錬」とは、刀を作るときに鋼を槌で叩き鍛える工程を表わす言葉ですが、あまりにも有名なこの言葉は、近年では刀の制作自体を指すようにもなりました。転じて、鉄を打つように厳しい研鑽を積むという意味でも知られています。ここでは、刀の制作工程のひとつである鍛錬について観ていきましょう。

積み沸しと本沸し

鍛錬をするためには、まずへし作業で割られた鋼を「テコ棒」に重ねていきます。鋼はより火が当たりやすく、槌の力がかかりやすい外側に「鉱滓」(こうさい)などの不純物が抜けやすくなる特徴が存在。このため、小割した鋼を重ねる際には不純物の多い物を上に、不純物の少ない物を下にすることで、鍛錬時に鉱滓を効率的に火花として飛び散らせることができるのです。

このとき積み重ねる鋼は平均2~3kgほどですが、通常、刀1振の重さは1kg弱程度。つまり、積み重ねた鋼の半分以上が鍛錬によって取り除かれていくのです。

積み重ねた鋼は、崩れないように水で濡らした和紙で巻いたのちに、「沸し」(わかし)という作業に入っていきます。沸しとは、鋼の中心部までしっかりと加熱された状態を「鋼を沸す」と言われたことが由来となった作業。和紙を巻いた鋼に熱伝導をよくするための水溶き粘土と、鋼と空気の間を遮断し、鋼自体が燃えることを防ぐための藁灰を付け、火床へ入れて加熱します。周囲の粘土が溶けるまで加熱し、加熱された鋼は崩れないように槌で叩いて圧着させていくのです。

鞴を使用して火の強さや温度を確認することで刀工は鋼の状態を把握し、最後に一度大槌で叩くことにより発生した火花の様子をみて、沸しの完成度を確認します。沸しが不十分な場合は、大槌で叩く作業を繰り返して鋼を鍛着させていくのです。本沸しでは、古い藁灰を払って新しい藁灰を撒き、再度沸す作業を行ないます。これにより、さらに鋼から鉱滓が取り除かれていくのです。

「沸し(わかし)」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

折り返し鍛錬

沸しを終えると、鍛錬に入ります。鍛錬をすることで不純物はさらに取り除かれ、炭素が均一化されるため、鋼はより強靱に、洗練された金属となるのです。

鋼を鍛える人数は、テコ棒を持って小槌で鍛える「横座」と、横座の指示に従い大槌で叩く「先手」の2人。このとき大槌で叩くことを「相槌を打つ」と言い、慣用句の語源にもなりました。

鍛錬では、鋼を叩いて長方形に延ばしたあと、中心に鏨(たがね)で切れ込みを入れて半分に折り返し、槌で叩く作業を繰り返します。この方法を折り返し鍛錬と言い、折り返し鍛錬には、同一方向に折り返す「一文字鍛え」という手法と、縦横を交互に折り返す「十文字鍛え」という手法の2通りが存在。この作業を5~20回程度繰り返し、何度も折り返すことで硬く粘り気のある鋼に変わっていくのです。地鉄に現われる模様も、折り返し鍛錬により決まります。

「折り返し鍛錬・焼き入れ」YouTube動画

折り返し鍛錬・焼き入れ

造込み

折り返し鍛錬では、2種類の鋼を制作。これは「皮鉄」(かわがね)と「心鉄」(しんがね)と呼ばれ、皮鉄には硬く強靱な鋼を使用し、心鉄には柔軟な鋼を使います。この2種類を組み合わせることを「造込み」(つくりこみ)と言い、組み合わせることで「折れず・曲がらず・よく切れる」刀が出来上がるのです。

造込みでは、やわらかい心鉄に硬い皮鉄を巻き付け、熱を加えて鍛造していきます。これは「甲伏せ」(こうぶせ)という、2種類の鋼を使用する手法。造込みには、皮鉄と心鉄に「刃鉄」(はがね)を加えた3種類を組み合わせる「本三枚」(ほんさんまい)という手法や、本三枚にさらに「棟鉄」(むねがね)を加え、4種類の鋼を組み合わせる手法「四方詰め」(しほうづめ)などもあります。なお、長い歴史のなかで失われてしまった手法もあり、どのように鍛造されたのか、現在では分かっていない刀なども存在するのです。

世界でも有数の刃物の産地として有名な岐阜県の「関市」についてご紹介します。

刀の整形

鍛錬が終わると、打った鋼を刀の形に整える作業を行ないます。ここでの作業は刀の完成形を決める重要な工程のため、刀工の匙加減ひとつで刀の姿や刃文(はもん)などの文様が変わっていくのです。

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整形と火造り

はじめに、鋼を沸した状態で徐々に刀の形に打ち延ばしていく素延べ(すのべ)という作業を行ないます。鋼を少しずつ延ばしていくのは、刀を打つ際に無駄な負荷がかかり、(きず)などの原因となるのを防ぐため。ある程度打ち延ばすと、続いて刀の先端を斜めに切り落とし、鋒/切先(みね/きっさき)となる部分を打ち出していきます。

このとき、ただ切り出しただけでは鋒/切先が脆くなってしまうため、刃は切り出した部分の反対側から打ち出していくのがポイント。素延べは最終的な刀の完成形を決めるため、慎重に行なわなくてはいけません。

火造り

火造り

素延べを終えると、「火造り」という作業に入ります。火造りとは、沸した刀身に「」(しのぎ)や「横手筋」(よこてすじ)などを付ける作業。「平造り」(ひらづくり)や「鎬造り」(しのぎづくり)、「切刃造り」(きりばづくり)などの「造り」がここで決定されるのです。

また、身幅(みはば)や重ねの厚さなどの姿を決める工程でもあります。

焼き入れ

焼き入れの準備として、「せん」と呼ばれる器具で刀身を整えたのち、刀身に粘土や木炭、砥石の粉などを混ぜて作った「焼刃土」(やきばつち)を塗布。このとき、棟側には厚く、刃側には薄く塗布します。これは、焼き入れ時に刀身が火で焼けないようにしたり、刃先と棟側の冷却速度に差を出したりするため。この作業は「土置き」と呼ばれ、焼刃土の乾燥が済んだら、「焼き入れ」の工程に入ります。

焼き入れでは、刀身にムラができないように全体を726~800℃程度に加熱し、水に入れて一気に冷却。このとき土の多い棟側はゆっくりと冷却され、少ない刃側は急冷却されるのです。

この温度差により、日本刀の特徴である反り(そり)が生まれます。また、このときの刀身の温度により、「沸出来」(にえでき)か「匂出来」(においでき)の違いが現われるのです。例えば、「相州伝」では高い温度で焼き入れがされるため沸出来となり、「備前伝」では低温で焼き入れが行なわれるため、匂出来となります。この温度管理は鋼の色を頼りに行なわれ、刃文も焼き入れ時に生まれることから、焼き入れは職人の特徴が顕著に表われる作業と言えるのです。

仕上げ

焼き入れが終わると、仕上げに入ります。刀の制作過程における最終工程を観ていきましょう。

鍛治押と茎仕立て

仕上げに、「鍛治押」(鍛治研とも)と呼ばれる、反りなどの調整をかねて刀身を研磨する作業と、(なかご)に鑢(やすり)をかける「茎仕立て」と呼ばれる作業が行なわれます。

鍛治押では、疵の確認や地刃の姿などの調整も兼備。茎仕立ての際には、に固定する目釘穴(めくぎあな)を開け、各刀工の特徴となる「鑢目」(やすりめ)が加えられるのです。最終確認が済むと、刀鍛冶の手で行なわれる最後の作業となる「銘切り」が行なわれ、刀は刀工の手から離れます。

刀が刀工の手を離れたのちは「研ぎ師」に渡り、研磨され、私達の知る美しい滑らかな刀身へと変貌。その後、「白銀師」(しろがねし)により鎺(はばき)や切羽(せっぱ)、(つば)などの金具が制作されたり、「鞘師」により刀に合った鞘が作られたりして刀は完成されるのです。

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