刀の基礎知識

日本刀の値段

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今までに最も高い値段で取引された日本刀をご存じでしょうか。
昭和時代の1位は、日本一の名刀と称される国宝の「大包平」(おおかねひら)。現在の貨幣価値に換算すると、およそ2億6,000万円の値段が付いたと伝えられています。2020年(令和2年)に、これを超える日本刀が現われました。クラウドファンディングにより岡山県瀬戸内市が購入した国宝「山鳥毛」(さんちょうもう/やまとりげ)で、その値段は5億円と伝えられています。
一方、初心者の方にも手が届く日本刀もあり、「脇差」や「短刀」のお手頃な作品なら数万円から購入できるのです。日本刀の値段は、作刀した刀工や年代、どんな武将が手にしたのかなど、様々な要因で決まります。また、価値や値段は時代の流行によっても変化するのです。そんな日本刀の値段について、詳しく見ていきましょう。

長期にわたり最高額を誇った国宝「大包平」

国宝重要文化財に指定されている貴重な日本刀でも、個人が購入することは可能です。しかし、名刀「大包平」(おおかねひら)を購入したのは個人ではありませんでした。大包平を鍛えたのは、平安時代後期に備前国(現在の岡山県)を拠点とした「古備前派」の刀工「包平」(かねひら)です。

大包平は、安土桃山時代の戦国武将池田輝政」(いけだてるまさ)が所持し、そのあと代々池田家に伝えられました。そして1951年(昭和26年)、「太刀 銘 備前国包平作」(名物大包平)として国宝に指定。1967年(昭和42年)に当時の文部省が6,500万円で買い上げたのです。現在の貨幣価値に換算すると、およそ2億6,000万円という日本一の名刀にふさわしい値段でした。

現在は「東京国立博物館」(東京都台東区上野)に保管されています。

大包平
大包平
備前国包平作
鑑定区分
国宝
刃長
89.2
所蔵・伝来
池田輝政 →
独立行政法人
国立文化財機構
(東京国立博物館)
大包平
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5億円の寄付を募って購入された国宝「山鳥毛」

「山鳥毛」(さんちょうもう/やまとりげ)は「山鳥毛一文字」とも言い、鎌倉時代に栄えた「備前福岡一文字派」の作品と考えられている名刀です。名前の由来は、山鳥の産毛を並べたような繊細にして華やかな刃文(はもん)にあります。

1556年(弘治2年)10月、「上杉謙信」が上州白井(現在の群馬県渋川市)に出陣した際、「白井城」の城主「長尾憲景」(ながおのりかげ)より贈られ、以後上杉家に伝来しました。上杉家所蔵の名刀を記した「上杉家御手選三十五腰」(うえすぎけおてえらびさんじゅうごよう)にも選ばれています。

この山鳥毛が作刀された岡山県瀬戸内市では、地元生まれの名刀を買い戻すため、2018年(平成30年)11月に「山鳥毛里帰りプロジェクト」を発足。岡山県はもとより、日本全国さらには海外からも多くの人々がプロジェクトに賛同し、寄付金は目標額の5億円を超えました。そして、2020年(令和2年)3月17日に岡山県内在住の個人所有者との間で売買契約が成立したことが発表されたのです。

現在は、岡山県瀬戸内市が所蔵。「備前長船刀剣博物館」(岡山県瀬戸内市)が保管し、2020年(令和2年)の9月10日~10月4日には一般公開されました。

山鳥毛一文字

山鳥毛一文字

鑑定区分 刃長 所蔵・伝来
なし 国宝 2尺3寸6分
(79.2cm)
上杉謙信→
上杉景勝→
上杉家→
個人所蔵→
岡山県立博物館
(委託)→
備前長船刀剣博物館

鑑定区分による日本刀の値段・相場

鑑定書

現代では、日本刀は美術品として高く評価されています。そのため販売・買取において定価というものはありません。いくつもの条件を考慮した上で値段は決められますが、なかでも日本刀の相場に大きく影響するのが「鑑定区分」です。

日本刀の鑑定区分は、「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」によって審査され、4つのランクに分類。そのランクであることを示す「鑑定書」が発行されます。

それぞれのランクに評価される審査基準と、おおよその相場をご紹介しましょう。

日本美術刀剣保存協会日本美術刀剣保存協会
「日本美術刀剣保存協会」は、日本国の文化財の保護と文化の普及振興に寄与することを目的として活動しています。

保存刀剣

江戸時代までに作刀され著名な刀工のが真正である作品、または無銘であっても年代や生産地、刀工の系統が明らかな作品。保存状態が万全ではなく地刃にわずかな疲れ(きず)が見られても、鑑賞するのに十分であれば合格となります。

明治時代以降の日本刀に関しては、在銘で出来栄えの優れた作品であることが条件です。再刃(さいば:火災などで焼けた刃を焼き直すこと)の日本刀は基本的には不合格ですが、南北朝時代以前に作刀された著名刀工の在銘作で、資料性が高く、地刃や(なかご)の痛みが少ない作品は合格となる場合もあります。

値段の相場は10~100万円程度です。

特別保存刀剣

保存刀剣のなかでも特に出来が優れ、保存状態の良い作品。室町時代及び江戸時代の無銘作は合格の対象になりませんが、例外として著名刀工の上作と鑑定され、保存状態の優れた作品は認められる場合があります。

値段の相場は、おおむね30~300万円です。

重要刀剣

特別保存刀剣のなかでとりわけ出来栄えが優れ、保存状態が良く、国認定の「重要美術品」に準ずると判断される作品。室町時代以降の作刀は在銘に限り、江戸時代以降の作刀なら生ぶ茎(うぶなかご:作刀されたときのまま磨上げされていない茎)で在銘であることが条件です。

値段の相場は、100~500万円ほどとなっています。

特別重要刀剣

重要刀剣のうち、さらに傑出した出来栄えで保存状態も申し分なく、資料的価値が極めて高い作品。国認定の重要美術品に相当、または国指定の重要文化財に準じる 価値があると判断されることも必須条件です。

たいへん希少であるため、値段の相場は500万円以上。1,000万円を超えても驚くにはあたりません。

日本刀の種類によって異なる値段の相場

日本刀は刃長によって種類が区別され、値段の相場も違ってきます。

一般的に、刃長が60cm以上あり、刃を下に腰から吊るして佩く日本刀が「太刀」(たち)、刃を上にして腰に差す日本刀が「打刀」(うちがたな:刀とも)です。武士が打刀と共に指す、刃長30~60cmの日本刀は「脇差」(わきざし)、それより短い刃長30cm以下は「短刀」と呼ばれます。

最も値段の高い日本刀が太刀と打刀。短刀はその半分が相場で、脇差なら3割ほどです。

作品を手掛けた刀工や、その出来の良し悪しなどでも評価は大きく変わりますので、単純に刃長の長い日本刀ほど高価になるわけではありません。そのなかでも、脇差や短刀には比較的値段の安い作品もあり、はじめて日本刀を購入するという方にもおすすめです。

著名な刀工の作品は高くなる傾向に

日本刀の出来による刀工の格付け

同じ時代に作刀された日本刀でも、その価値は刀工によって大きな差があります。著名な刀工や人気の高い刀工の日本刀は高くなる傾向にありますが、それとは別に刀工には明確な格付けがあり、これが「位列」(いれつ)です。

位列は5段階で表わされ、最も高いのが「最上作」。そして「上々作」、「上作」、「中上作」、「中作」と続きます。言わば作品の出来栄えによる刀工のランキングと言えるでしょう。

最上作の一例として、「古刀」では「天下三作」(てんがさんさく)として知られる「正宗」、「郷義弘」(ごうのよしひろ:江義弘とも)、「粟田口吉光」(あわたぐちよしみつ)、「新刀」では「東西の横綱」と称された江戸の「長曽祢虎徹」(ながそねこてつ)、摂津国(現在の大阪府北中部、兵庫県南東部)の「津田越前守助広」(つだえちぜんのかみすけひろ)などが挙げられます。

刃の切れ味による刀工の評価

業物」(わざもの)という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

これは、真剣である切れ味が鋭い最強の日本刀を基準とした刀工の評価のこと。江戸時代に幕府の試し斬り役「御様御用」(おためしごよう:刀剣の試し斬り役)を務めた山田家の5代当主「山田浅右衛門吉睦」(やまだあさえもんよしむつ)が「懐宝剣尺」(かいほうけんじゃく)という書物にまとめました。

その書物には、最も鋭い切れ味を誇る「最上大業物」から「大業物」、「良業物」、「業物」までの4段階と「大業物・良業物・業物混合」が記載され、刀工の評価基準となっています。

最上大業物には、前記の最上作でも名前の挙げられた長曽祢虎徹などが記載されていますが、天下三作の刀工は誰も取り上げられていません。これは、すでに大名家の家宝となっている名刀を試し斬りに出すことはできなかったためではないかと推測されています。

また、優れた切れ味で有名な「千子村正」(せんご/せんじむらまさ)も掲載されていません。この点については、当時、創作とは言え「妖刀伝説」が広まっていたため、山田浅右衛門吉睦が徳川幕府に遠慮したと考えられています。

現代刀の値段・相場

1876年(明治9年)3月18日に発布された「廃刀令」(はいとうれい)以降に作られた日本刀が「現代刀」です。骨董価値はほとんどありませんが、重要無形文化財保持者(人間国宝)など著名な刀工の作品であれば、200万円を超えることもあります。

一般的には、61~72cmの現代刀なら刀装具を含めて数十万~100万円ほどです。

傷や錆の有無に注意

傷や割れのある日本刀には美術品としての価値も資産価値もほぼありません。ただ、有名な戦国武将などが戦場で用いたと明らかになっている打ち傷は「誉れ傷」と言い、マイナスポイントにならない場合もあります。

錆も評価を下げる要因であり、研ぎに出すから構わないと考えて錆の浮いた安い日本刀を購入すると、研磨代金の方が高く付くこともあるのです。また、有名な刀工の銘を別人が作刀した日本刀に入れる「偽名」(ぎめい)も数多く作られているため、不自然に安い日本刀には注意が必要となります。

日本刀の値段

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日本刀の書物

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近年、ゲームや舞台、アニメなどの影響で若い世代が日本刀に魅了されるようになりました。そこで「日本刀鑑賞」と言えば、やはり日本刀を所蔵している美術館や博物館に出向くことを考える場合が多いかもしれません。しかし実物だけが日本刀の資料ではありません。書物として残される日本刀の記録も十分な価値を持っています。日本刀に関する本は、刀身や茎(なかご)を写した「押形」(おしがた)が有名ですが、刀剣についての和歌を収録した本や、試し斬りの実験結果をまとめた本など、たくさんの本が存在するのです。日本刀にまつわる書物と共に、その歴史を追っていきましょう。

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日本刀の最高傑作

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日本刀とは、伝統的な日本独自の製法で作られた刀のこと。日本刀は、古来より専門の刀鍛冶によって作刀され、長い歴史の中でその技術は進化していきました。現在でも作刀技術は伝えられ、新しい刀も生み出されているのです。刀ができるまでの工程を紹介します。

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日本刀のオークション

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名刀が観られる博物館・美術館

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